宇宙物理学研究室

広島大学 大学院 理学研究科 物理科学科専攻

相対論的天体現象の研究(小嶌)

観測的に、ブラックホールの存在の証拠が確かになっています。 このような天体の重力は非常に強く、一般相対論を用いた取扱いが必要となります。ブラックホールそのものを観測することはできませんが、ブラックホールは周りの物質の運動に大きく影響を与えます。その降着円盤の形成と進化、あるいは安定性に特徴が現れるので、それを理論的に研究しています。また、コンパクト星(中性子星やブラックホールの総称)の形成や変動現象についても研究しています。動的な過程には重力波の発生が伴い、 将来観測されるべき重力波に如何に物理的情報が含まれるかを探求しています。

パルサーやマグネターの磁気圏構造の解明(小嶌)

パルサー(強磁場をもつ回転中性子星)が発見されて約40年になります。 外部へのエネルギー輸送過程には、強磁場と回転が重要な物理的要因として考えられているが、不明な点も数多くあります。 マグネターはパルサーよりさらに強い磁場をもっていると示唆される 天体であり、バースト現象を示します。このような天体の磁気圏構造の解明をシミュレーションを通じて行っています。

観測的宇宙論と暗黒エネルギーの研究(山本、照喜名)

宇宙背景放射の観測や大規模銀河サーベイに代表される 宇宙論的観測は、大きな進展を見られます。これらの観測に基づいて浮かび上がってきた宇宙像は、宇宙初期にインフレーションと呼ばれる時代があったことや、宇宙が暗黒物質、さらに暗黒エネルギーと呼ばれる未知の構成要素を含むことを強く示唆しています。 観測的宇宙論に基づいてこのような宇宙像を検証するための理論的研究を行っており、特に宇宙の大規模構造の精密な定量化から暗黒エネルギーの探求を続けています。

膨張宇宙での量子場の基礎研究(山本)

宇宙背景放射の温度揺らぎや銀河の大規模構造の起源をインフレーション期の量子揺らぎに基づいて説明する考え方が、観測を説明できる宇宙の標準的模型に取り込まれています。 これは、初期宇宙という状況下での量子物理を宇宙論的 観測と比較し検証できるかもしれない極めて興味深いテーマです。曲がった時空での量子場の理論を基礎として、インフレーション期に生まれる揺らぎの性質や、観測との関わりを調べています。また、この研究の応用として、加速荷電粒子からの放射の問題を曲がった時空での量子場理論の枠組みを用いて調べる研究等も行っています。

重力レンズ現象の研究(山本)

一般的に重力レンズ現象とは、天体の生み出す重力場によって光の経路が歪められ、光源天体の増光、変形、多重像等を引き起こす現象です。これまでに多くの研究の蓄積がありますが、比較的未開拓の重力レンズ現象における波動効果に着目した理論研究を行っています。 また、重力レンズ現象は宇宙を調べる道具としても重要と広く認識されるようになっており、暗黒エネルギーの性質を探る上でも重要な役割を担うと期待されます。

銀河団の弱い重力レンズ解析(岡部)

背景銀河に対する重力レンズ効果は対象天体の力学状態によらず質量を測定する唯一の手法です。中でも重力レンズ信号が弱いレンズ現象を弱い重力レンズ効果と呼びます。 銀河団は太陽質量が10の14乗から15乗までに達する宇宙で最大の天体であり、弱い重力レンズ効果で質量が測定できる天体の一つです。 私達は、すばる望遠鏡主焦点カメラの撮像データを用いて、銀河団領域の弱い重力レンズ効果の解析を行い、銀河団の質量構造とその進化の解明を行っています。

銀河団の多波長研究(岡部)

銀河団の質量の約85%が目に見えることができない物質、暗黒物質(ダークマター)、約10%が高温プラズマ(銀河団ガス)、約5%が銀河で構成されています。 暗黒物質は重力レンズ効果、高温プラズマはX線やスニヤエフ・ゼルドビッチ効果(SZ効果)、銀河は光学・近赤外・紫外などで観測されます。 これらの観測手法はそれぞれの構成要素を直接見るため、相補的と言えます。これらのデータを組み合わせて、それぞれの物理量がどの様に関係しているのかを研究し、 銀河団の構造・形成・進化の解明を目指しています。