小嶌 康史 教授
相対論的天体(ブラックホールや中性子星)では重力が強く非常にコンパクトで、短時間に莫大なエネルギーの解放を伴います。このようなことが起きるのは稀ですが、大変明るいため遠方でも発見されます。理論的な大筋は確立しているものの、未解決の問題がいくつも残されています。研究課題の一つであるパルサーの磁気圏構造があります。大量の自転エネルギーが電磁気学的に外部に運ばれて、粒子の運動エネルギーに変換されるのですが、その転換過程を研究しています。また、磁場が通常のものよりはるかに強いマグネターという天体があり、そこで起こる突発的フレア現象の機構の解明やブラックホールの存在をより確実にする理論的証拠を模索しています。また、これまでの観測は電磁気学的過程を通じた光を通じての観測でしたが、極めて激しい動的過程では重力の変動を伝える重力波も放出されます。岐阜県神岡に現在建設中の重力波天文台KAGRAの理論グループに参加し、数年以内(2017年頃)に重力波を直接捉えられるのを楽しみにしています。
岡部 信広 准教授
宇宙の暗黒物質(ダークマター)分布の研究をしています。暗黒物質は宇宙のエネルギーの約27%を占め、目に見えることができない未知の物質です。目に見ることができない物質は、電磁相互作用をしていないので、X線や光などの観測を通して直接見ることはできません。しかし、アインシュタインの一般相対論が予言する重力レンズ効果を用いて暗黒物質の質量分布を直接測定することができます。日本のすばる望遠鏡は重力レンズ効果を観測する世界最高性能の装置です。現在、すばる望遠鏡の新しい主焦点カメラ(ハイパーシュプリームカム)を用いて日本ープリンストン大学ー台湾の国際共同プロジェクトによって宇宙の暗黒物質の地図を作る宇宙探査が5年に渡って進行中です。この宇宙探査は仮にハッブル宇宙望遠鏡で同じことをしようとすると100年以上もかかる大規模な計画です。これにより、宇宙の構造進化の解明が劇的に進むことが期待されています。また、暗黒物質分布を調べる最適の天体は、太陽質量の100兆倍から1000兆倍にも達する宇宙最大の天体である銀河団です。銀河団は様々な波長帯で観測されています。例えばX線は銀河団内に閉じ込めらている高温希薄プラズマを観測することができます。様々な観測手法を組み合わせて、暗黒物質や通常目に見える物質(バリオン)の共進化の研究をしています。
木坂 将大 助教
ブラックホールや中性子星などが引き起こす高エネルギー天体現象を研究しています。このような現象が及ぼす領域全体の大きさと比較すると高密度天体は非常に小さく、また周囲の物質などの影響もあり、一般には天体近傍からの直接的な情報の入手は難しいと考えられています。しかし、高速で自転する中性子星からの電磁波パルス放射などの短時間変動を示す電磁波、周囲の環境と相互作用することなく伝播が可能な重力波放射などの手段を用いると、高密度天体近傍を直接 "見る" ことが可能です。これらの情報を利用して、強重力、高密度、強電磁場といった極限環境下における高密度星からのエネルギーの供給機構と星近傍でのプラズマの運動エネルギーや放射へのエネルギー変換機構、特に放電現象のように激しく変動する強い電場による粒子加速と電磁波放射、これを起点とした電磁カスケードによるプラズマの大量の生成といった機構を研究しています。