Setouchi Summer Institute 2016

August 31st - September 2nd, 2016, Higashi-Hiroshima, Hiroshima


発表/talk


後藤亮

Bの物理: 基本と現状

Bの物理は、一言で言うと「標準模型とよく合っているが、いくつかの測定量に 3シグマ程度の『アノマリー』が見られる」というのが現状である。本講演では、 このBの物理の現状をレビューする。まず、クォークの世代構造とCKM行列等の標 準模型でのフレイバー物理の基本的な事柄と、Bの物理の解析に用いられる電弱 スケール以下での有効理論のフォーマリズムを説明する。次に、いわゆるユニタ リティ三角形にまつわる、B中間子のいろいろな崩壊モードでの崩壊幅やCP非対 称性、B-Bbar混合等の観測量の、標準模型の予言値と測定値の比較を解説する。 その後、「アノマリー」が報告されているB->D(*)τν、B->K*μ+μ-等の崩壊モー ドの観測量について、最近の状況、標準模型を超える物理での解釈を紹介する。 また、今後 Belle II 実験で測定が期待される観測量にも触れる。


清水勇介

Minimal texture of the neutrino mass matrix and CP violation

ニュートリノ振動実験により、ニュートリノには2つの質量二乗差があり、 レプトンには大きな2つの世代混合があることが分かった。 また、ニュートリノ振動の精密測定の実験により、レプトンの第一世代と第三世代の 混合角(\(θ_{13}\))がクォークの第一世代と第二世代の混合角(カビボ)程度 大きいことが判明した。さらに最近のT2KやNOνAの実験により、 レプトンセクターのCPの破れが測定されつつある。 本発表では、ディラックニュートリノと荷電レプトンの質量行列が ”Minimal Texture”であると仮定する。 ”Minimal Texture”とは、対称行列で(1,1), (1,3), (2,2), (3,1) 成分が ゼロとなる質量行列のことである。 我々の模型ではニュートリノの質量は順階層性のみ許され、大きな\(\theta_{13}\)を示唆している。 また、CPの破れの大きさやニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊について議論する。


由宇朗大

CP violation and leptogenesis in three generation seesaw model

Neutrino is a kind of leptons, which does not have electric charge and interacts only with weak force except gravity, in the framework of the Standard Model. Neutrino is recognized to have a tiny but non-zero mass by some physical phenomena, such as the neutrino oscillation. However, the Standard Model can not fully describe how the neutrinos get their masses. Physics beyond Standard Model which adds the necessary modification for this problem has been required. As a possibility to solve the neutrino mass problem, the seesaw mechanism has been suggested. We studied the tiny masses of neutrinos by means of the seesaw mechanism. This extends the Standard Model by introducing heavy right-handed neutrinos. From the view point of this attractive mechanism, we discussed the CP violation in neutrino oscillation with the three generation model and the leptogenesis, which indicates an asymmetry between leptons and anti-leptons. We also referred to the relationship between this model and those symmetry breaking. We calculated the general form of Jarlskog invariant, which is a characteristic invariant of CP violation, in terms of three generation Dirac mass matrix and three right-handed neutrino masses. The model with three generations completely includes the minimal-seesaw model with only two right-handed neutrinos and could produces more visions. Next, as a simplified but consistent model, we supposed that only one of the neutrino mass eigenvalues is equal to zero. This assumption of a single massless neutrino is not contradictory to any experimental and theoretical input. We derive the other two neutrino mass eigenvalues and the MNS matrix which describes the flavor mixing. This research could lead to the explication of the physically fundamental symmetry breaking in the very early universe. And the introduced heavy right-handed neutrinos could be a candidate for Dark Matter.


梅枝宏之

Resonance Chiral Lagrangian を用いたDalitz崩壊の解析

軽いハドロンの崩壊に関する実験データは、QCDの低エネルギーダイナミクスを調べる上で重要な役割を果たす。特に、Dalitz崩壊(V − >Pl+l, P − >γl+l)は、NA60やBESIII等で精密に測定されている。本研究では、Dalitz崩壊における遷移形状因子(TFF)を、ベクトル中間子のresonance fieldが入った模型を用いて解析する。V − >Pl+lのTFFに関するデータをフィットすることで、実験と無矛盾なパラメーター領域を得ることができる。これらのパラメーター値を使い、(1)将来的に測定されるようなρ0 − >π0l+lρ − >ηl+lω − >ηl+l, φ − >ηl+lのTFFに対する予言を与える。(2)η − >ππγの微分分岐比の解析を行い、WASA-at-COSYによって得られた実験値と比較する。(3)ピーク領域の付近で、中間状態のρωを考慮したη’− > γl+lおよびφ − >ηl+l に対するTFFの解析を行う。


Apriadi Salim Adam

Time Evolution of particle number Asymmetry in an expanding universe

We study creation and time evolution of particle number asymmetry with non-equilibrium quantum field theory. We introduce a model of a neutral scalar and a complex scalar. The interactions among them are CP violating and particle number violating. Starting with an initial condition specified by density matrix, we show how particle number asymmetry can be generated through interaction. We investigate the time evolution of particle number asymmetry with scale factor of universe and we show how it depends on temperature, small coupling constants in the interactions and the difference masses of scalar particles.


飯沼昌隆

偏光の連続測定における推定値と測定結果との非古典相関

被測定系の物理量と測定系の物理量が可換な場合、つまり測定対象の物理量の固有ベクトルを測定基底として射影測定すれば、値は固有値になることは知られている。それでは両者が可換でない場合、あるいは可換であっても射影測定でない場合、物理量の測定値はどんな値をとるのだろうか?このような測定では実験から値を評価できないと思われる。しかし小澤の提唱した測定誤差は、被測定系の物理量と測定系の物理量との関係を記述しているため、測定誤差を評価関数として用いることで、非可換であっても被測定系の物理量を推定することが可能となる。そこで我々は二準位系の物理量である光子の偏光物理量に着目し、最も感度の高い測定基底つまり固有ベクトルを測定基底とする場合と最も感度の低い相補的な関係にある測定基底の両方で評価する実験を行った。その結果、推定値が固有値の範囲を大きく超える非古典相関が観測できた。さらにこの推定値は固有値とは異なり測定誤差をゼロにすることもわかった。


高木堅太

非可換離散群を用いたドメインウォールの解析

離散対称性が自発的に破れたときはいつも、ドメインウォール(DW)が発生する。この 壁は対称性が破れて生じた異なる真空を隔てるポテンシャル障壁であり、初期の宇宙にお いてDWが多数のネットワークを形成していた可能性があるとされている。しかし、この DWの存在は標準の宇宙論に大きな変更を要請するものであり、解明すべき謎が残されて いる。そこで現在、DWの新たな発生メカニズムを提案することを目的に、非可換離散群を 用いたDWの解析に取り組んでおり、今日はその成果の紹介を行う。


高橋隼也

クォークシーソー模型の低エネルギー有効理論を用いた現象論

ヒッグス粒子の発見に代表されるように,素粒子標準模型は成功を収めてい る.一方で,標準模型にはいくつかの問題が残っている.その一つが,クォー クの質量階層性である.標準模型では質量階層性を湯川相互作用の強さの階層 性に帰着させる.だが,相互作用の強さは理論から決めることができないため,湯 川相互作用の強さをうまく調節する必要が生じる.
クォークの質量階層性を自然な形で説明する標準模型の拡張として,クォーク シーソー模型がある.クォークシーソー模型では, SU(2) 一重項のvector like ク ォークを導入することで,標準模型のクォークの質量を説明する.それに加えて, 導入したvector likeクォークはtreeレベルのFCNC過程や新たなCP対称性の破れ を引き起こす.
本研究では,以上の効果を解析する有用な方法として,導入したvector likeクォ ークを積分し,低エネルギー有効理論を構築し,現象論を行う.


上野峻一郎

ツイステッド・グラディエント・フロー結合定数を用いた\(\Lambda_{\overline{\mathrm{MS}}}\)の数値的評価

我々は,格子場の方法を用いてツイステッド・グラディエント・フロー(TGF)結合定数を計算し,そこから格子QCDにおける最も重要な物理量である\(\overline{\mathrm{MS}}\)処方で記述されたラムダ・パラメータとハドロン・スケール量との比を数値的に評価した.ここで,TGF処方とは,格子上での繰り込みスキームとして定義される.計算は,中間スキームとしてシュレーディンガー汎関数(SF)処法を用いることにより,以下の式のように既知の量と組み合わせて行った. \(\frac{\Lambda_{\overline{\mathrm{MS}}}}{A_{\mathrm{phys}}}=\frac{\Lambda_{\overline{\mathrm{MS}}}}{\Lambda_{\mathrm{SF}}}\cdot\frac{\Lambda_{\mathrm{SF}}}{\Lambda_\mathrm{TGF}}\cdot\frac{L_{\mathrm{max}}\Lambda_{\mathrm{TGF}}}{A_{\mathrm{phys}}}\). 本講演では,格子場の理論の基本的な考え方を簡単に解説することから始めて,本研究の昨年度SSIでの発表からの進展について紹介する予定である.


國安正志

回転する時空における漁師トンネル効果に基づくHawking輻射 ~ 事象の地平面近傍の次元縮約とその応用について ~

Hawking輻射は一般相対論賭場の量子論が関連する非常に重要かつ興味深い現象である。 ながらくHawkingの議論に基づいた計算が行われていたが、Parikh&Wilczekにより量子 トンネル効果を用いた計算手法が提案され、盛んに研究が行われた。当初は球対称時空に おける考察が数多く行われたが、一般に4次元のブラックホール(BH)は回転しており軸対 称な時空である。ところが回転の効果を考慮すると、実際の計算は容易でなくなる。そこ でUmetsuらは事象の地平面近傍における次元縮約を用いることで、量子トンネル効果に 基づくHawking輻射の計算を行い、4次元Kerr-Newman-BHにおける逆反応の効果を考察した。
発表では具体的な次元縮約の計算手法や、量子トンネル効果に基づくHawking輻射の導 出についてレビューを行う。またKerr-Newman-BH以外の回転する時空について紹介し、 同様の手法を用いた計算結果も紹介する予定である.


高田浩行

An Introduction to free gauge fields of arbitrary spin (整数スピンと半整数スピンも統一的に扱う)

様々なスピン場をまとめて考えラグランジアンを構成する方法が研究されてきた。そこ では整数スピンと半整数とを別々に考えていた。今回は整数と半整数のスピンの場をもま とめて扱う形式を紹介する。
以前の方法では理論の中のスピンを増減する演算子の増減単位が1だった。 これを元に考える限り半整数分のスピンを変化させることはできない。 この演算子aμはローレンツの添え字を持つ場< em>Φμに対応して出てきていた。(ベクトル 場の例)
そこで次のSL(2,C)表示との関係を使う
$$\Phi_\mu = \frac{1}{2}(\bar{\sigma}_\mu)^{\dot{\alpha}\alpha}\Phi_{\alpha,\dot{\alpha}}$$
4元パウリ行列\(\bar{\sigma}_\mu\)によってΦμのかわりに\(\Phi_{\alpha,\dot{\alpha}}\)を使うのだ。すると対応してスピノール の足をもった演算子\(a^\alpha,\bar{\alpha}^{\dot{\alpha}}\)を導入できる。これらはスピンを 1/2 だけ変化させる。これを 元に理論を構成すれば整数と半整数をまとめて扱える。
そのあとは以前と同じく、拘束系の場の理論で拘束代数を見つけてゲージ対称性を持った理論を作る。


白石清

GR-GSGハイブリッド重力

バイグラビティ理論はゴーストを生じない質量項の発見により,近年復活を遂げた。 低エネルギー修正重力理論の一つとして,宇宙論における問題(ダークマター,加速膨張)を解決 することが期待され,さまざまな研究がなされているが,明快で決定的なメカニズムは得られていない。 このため,いろいろな拡張重力理論を組み込んだモデルが提案されている。 最近,Novello らは,スカラー場とその微分により記述される有効計量を基にした重力理論 Geometric Scalar Gravity (GSG) を提唱した。GSG においてもシュワルツシルト計量は厳密解であるが, 宇宙論的解は一般相対論とは異なる振る舞いを示す。 われわれは,GSG における有効計量を一つの計量として用いたバイメトリック理論を提唱する。 GSG においてシュワルツシルト計量は厳密解であるので,この理論の真空球対称解はそれからの 補正で表されることが保証される。また,加速膨張する宇宙論的解が存在することが示される。 本発表は,arXiv:1606.08980 [gr-qc] に基づく。


両角卓也

Angular distributions of a rare B meson decay and long -Distance effect (Review+ alpha)

Using the most general decay distributions for the rare B decay B − >K * l+l, the sensitivity to the long -distance effects which come from B − >K * J/Ψ, Ψ′− > K*l+l are studied.


坂本弘樹

Analytic solutions of CMB fluctuations for gauged Nambu-Jona-Lasinio inflation

The inflation theory, which is introduced to solve the cosmological problems, explains the exponential expansion of space-time. From Planck satellite we have obtained the fluctuations of Cosmic Microwave Background (CMB), namely the curvature perturbation \(A_s = 2.2 \times 10^{-9}\), the spectral index, \(n_s=0.9645\pm0.0049\), the running of the spectral index, \(\alpha_s=-0.0057±0.0071\) (68% CL, Planck TT, TE, EE+lowP) and the tensor-to-scalar ratio, \(r_{0.002} < 0.10\) (95% CL, Planck TT, TE, EE+lowP). It is known that Starobinsky model is located in sweet spot and \(\phi^4\) theory with non-minimal coupling to gravity in the strong limit is attracted to there.
We propose the gauged Nambu-Jona-Lasinio model, which is written by the effective theory of the strongly coupled gauge interaction with an asymptotic free \(SU(N_c)\) weak gauge interaction, as new scenario for the early universe. In this model the inflation occurs below the composite scale and a composite scalar plays a role of the inflaton. We had obtained the consistent results if we assume that the compositeness scale is infinity. However, this situation is not natural so it is necessary to consider the finite compositeness scale.
From the analysis of the CMB fluctuations for gauged Nambu-Jona-Lasinio model with a finite compositeness scale, we found that this model has two limits giving different behaviours and evaluated the CMB fluctuations with respect to these case. Also we found the limit reproducing the numerical results of our previous study.