研究紹介
〜MASANORI OKAWA〜
物質はクォークとレプトンと呼ばれる2種類の基本粒子から出来ています。
電子で代表されるレプトンは単独で自然界に存在し、実験で直接研究することが出来ます。
しかしクォークは強い相互作用による力を受け、単独では自然界に存在せず、陽子や中性子と言った複合粒子(ハドロンと呼びます)の内部に閉じ込められています。
このためクォークの性質を実験で直接研究することは出来ません。
クォークをハドロンの内部に閉じ込めてしまう強い相互作用は、量子色力学と呼ばれる場の理論で支配されていると考えられています。
この理論によると、クォーク間にはグルーオンと呼ばれる素粒子が飛び交い、その結果として強い力がクォーク間に生じます。
量子色力学のダイナミクスを定量的に理解するのは素粒子物理学の最も重要な課題の一つですが、このためにはハドロンの質量など種々の物理量を計算する必要があります。
ただし相互作用が強いため、量子電気力学で成功した摂動論的な研究をすることは出来ません。
非摂動論的な研究を可能にしたのが格子量子色力学であり、格子上に量子色力学を定義し自由度を有限にすることにより、数値的方法によって物理量を定量的に研究出来るようになってきました。
近年の大型計算機や計算手法の発達は目覚しく、大規模数値シミュレーションを用いた格子量子色力学の研究は着実に進んでいます。今までに多くの研究を行って来ましたが、その主要なテーマは次の通りです。

1)動的クォークの効果を取り入れた強い相互作用の研究
強い相互作用の性質はクォークとグルーオンのダイナミクス(動的効果)によって支配されています。従来は計算時間の制限からグルーオンの動的効果のみを考慮した研究がされてきましたが、計算方法を新たに開発し3フレーバーの動的クォーク効果を取り入れた研究を世界に先駆けて進めています。

2)弱い相互作用を記述するオペレーターのハドロン行列要素の研究
ハドロンの関与する弱い相互作用の研究には、CP非保存の特性を支配する小林・益川行列の決定など非常に重要な問題が解決されずに残っています。弱い相互作用を記述するオペレーターのハドロン行列要素を計算することによりこの研究を進めています。

3)クォーク・グルーオンプラズマ相への有限温度相転移の研究
クォーク・グルーオンプラズマ相への有限温度相転移の研究も格子量子色力学に課せられた重要な問題です。フレーバー数が2の場合、有限のクォーク質量では相転移はなくクォーク質量が消える時に2次の相転移があることを世界に先駆け示し、重イオン衝突実験の解析や宇宙初期の研究に大きな影響を与えました。

4)フレーバー1重項の物理の研究
今までの格子量子色力学の研究はフレーバー多重項の物理に限られてきました。我々はフレーバー1重項の物理の研究に必要な新しい計算法を開発し、これまで困難であると考えられていたη’中間子の質量の計算に成功し、U(1)問題の解決に貢献しました。


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